余市町長・齊藤啓輔氏とシンガーとして活動するMONCAによる対談。【前編】
りんごやさくらんぼといった果実。夏はウニの名産地としても知られ、ワイナリーやウィスキー蒸溜所など、海と山に囲まれた魅力に溢れる余市について齊藤町長が語る。
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余市の魅力について
齊藤町長はいつこちら(余市)に来られたんですか?
もともと北海道の紋別出身で、田舎が嫌で中学を卒業してすぐ地元を離れて、高校は函館の学校に行ってたんです。その後ずっと東京にいまして、外務省に入ってから東京と海外を行ったり来たりの生活だったんですが、北海道に十数年ぶりにきた時に北海道の持つポテンシャルを再発見することができて、5年前に北海道に戻ってきたという感じですね。
私もハタチで上京して横浜にいたり東京に行ったり北京にいたりしていたんですけど、去年にコロナの関係もあって北海道に帰ってきて、改めて北海道っていいなって思ったんですよ。
なので、感覚的には共通する部分があると思うのですが、北海道のポテンシャルについて気づいたポイントって何ですか?
子供の頃は一面に緑しかない田舎のところで遊んでいたら都会的な楽しみって全くないでしょ?
だから閉塞感とか息の詰まる思いしかしなかったんですが、ニューヨークやロンドン、パリといった世界中のいろんな街を見てきて、一回離れた北海道を新たな視点で見たときに「外国に来たんじゃないか」っていうような素晴らしい風景が広がってて。
なるほど。
たぶんずっと住んでいたら気づかなかったと思うんですが、そういう部分にポテンシャルを感じました。あとは食べ物も非常においしいですし。
そうですね。
私が北海道に来て車で移動しているときに、ドライバーさんと釣りの話になりまして。「朝もししゃもを100匹ぐらい釣ってきたんですよ!」っていう話を聞いて、ここでししゃもがそんなに釣れるっていうことも知らなかったですし、風景も食もそうですけど、ホスピタリティーとか、ずっと住んでたら気づかないような魅力がたくさんあって驚かされますね。
北海道出身なので、大人になった目で見つめ直したときに、いいポイントがたくさん見えたって感じです。
余市は緑がいっぱい広がっていて、ちょっと横を見ると海も見えて景色がいいですよね!
私アップルパイが好きで、いろんなところで食べてるんですけど、さっき余市の道の駅で売ってたアップルパイがめちゃくちゃ美味しくて!
余市は林檎の産地で、林檎の商業栽培が日本で最初に始まった場所なんです。
えっ、青森じゃないんですか?(笑)
青森はそのあとなんですよ。
へぇ〜!じゃあ余市の果物で有名なのはまず林檎なんですか?
当初は林檎でした。余市には竹鶴さんという方が設立したニッカウヰスキーがありますけれども、余市を選んだ1つのポイントとして林檎がたくさん採れるということがあったんですね。
ウィスキーができるまでって結構時間がかかるので、その間リンゴジュースを作ってキャッシュフローを回すという。
へぇ〜!
「ニッカ」って「大日本果汁株式会社」っていう会社名なんですよね。略して「ニッカ」なんです。
そうなんですか!初めて知りました!
小さいときに余市って言うとさくらんぼのイメージがあったんですよ。「佐藤錦」とか...
「南陽」ですか?
あっ、そうです!すごい美味しくて林檎よりさくらんぼのイメージが強かったんですよね。
私もさくらんぼ好きで夏は結構食べますね。
これからシーズンですよね?
これからシーズンです。
余市は大自然が広がっていてすごくいい場所だと思うんですが、余市で地元の人が休みの日に行く場所ってどこなんですか?
札幌に円山公園というところがありますけど、余市にも円山公園というところがあって。小高い丘になってまして、余市が一望できる場所で、芝生が整備されていて非常にくつろげる場所があります。あとはビーチ沿いや川沿いを散歩したりですとか、自然と触れ合うことができる町ですね。
海外の友達がきたときに「THE 観光スポット」みたいな場所はみんなネットとかで見過ぎてて。
それよりも地元の人が普段行くようなお店で食事したり遊んだりした方がスペシャル感があるっていうか。コロナが落ち着いて、海外から友達がきた時なんかにどこに連れてったら喜ぶかなぁって思ってて。
なるほど。果物狩りは、普段スーパーで売っているようなものが、実際にどういうところで育っているのかっていうことが現地で体験できるので、さくらんぼ狩りなんていいんじゃないですかね。
齊藤町長とワイン
齊藤町長はワインがお好きと聞いたんですが、どういった時に飲まれるんですか?
ワインは日常的に飲んでますね。
薬みたいな感じですか?(笑)
薬って言うとなんか美味しくないみたいなイメージになっちゃいますね。(笑)
昔おばあちゃんが適度な赤ワインは薬の効果があるって言ってて。(笑)
それは実際確かで「フレンチパラドックス」って言うんですが。フランス人って結構脂っぽい食事をするんですが、平均寿命は短くなく健康的に過ごされる方が多くて、その理由の一つとして赤ワインをたくさん消費することがあげられています。
じゃあおばあちゃんが言ってたことは間違ってなかったんですね!(笑)
正しいですね。(笑)
お酒はすごい飲む方ではないんですけど、昔は赤ワインが好きで、今は白ワインの方がおいしいなぁって思うようになったんですけど、齊藤町長はどちらがお好きですか?
私は赤も白も発泡性も全部飲みます。でも、最初は味のわかりやすい赤から始まって最終的に白に辿り着くって言うことはよく言われてますけどね。
余市はワインがいっぱいありますが、地元のワインでおすすめはありますか?
地元のワインも飲みますね。最近はピノ・ノワールっていう世界で人気の品種がありますけども、それって冷涼地域を好む葡萄で、北海道はピノ・ノワールの産地としていいんじゃないかということで非常に注目の集まる地域となっています。
そうなんですね。
北海道のワインは非常にレベルが上がってきていて、余市の「ドメーヌ・タカヒコ」では日本最高のピノ・ノワールが作られていて、デンマークのコペンハーゲンに「noma」っていう「世界のベストレストラン50」(英・William Reed International Ltd)で何回も1位に選ばれているレストランがあるんですけど、そこに唯一オンリストされている日本ワインをこちらで作っています。
そのワイナリーが余市にあるんですか?行きたい!
そうですね。非常に注目度も高くてワイン好きの方は皆さん着目されてますね。
齊藤町長がワインを好きになったきっかけって何だったんですか?
ワインってすごく歴史のある飲み物で、私はもともと外務省出身だから色々会食があったんですけど「どの人にどのワインを出すか」。そして出した時点でその人も「なるほどね、今日はそういうニュアンスね」っていうのが通じる世界の共通言語みたいな飲み物なんですよね。
なのでワインは勉強しておくと役に立つと思いますよ。
へぇ〜!おしゃれですね!
普段はどういったワインを飲まれるんですか?
色々飲みますけれどもその日の気分によって、天気の良い日に外でバーベキューとかだとカジュアルなものを飲みますし、気合の入ったフレンチとかだとそれにあったものを飲みますし。
普段の料理でも基本飲むのはワインなんですか?
基本ワインですね。
和食とかでも?
和食にも合わせますよ。寿司なんかにも合わせますし。
へぇ〜!すごい!
じゃあ家にも結構あるんですか?
家にもありますけど、一人で飲んでも楽しくないので家では飲まないです。(笑)
素人でもワインを美味しく飲めるポイントみたいなものってありますか?
ワインは気分を大事に飲むのが一番いいと思うから、誰と飲むかが美味しく飲むポイントじゃないですか?楽しい環境で飲むと。
ワインを飲むときに「こうしたら美味しく感じるよ」とかは?
ワインによっては本来持ってるポテンシャルをまだ発揮していないものがあるから、それをきちんと飲み頃で飲むっていうことは大事ですね。
じゃあ齊藤町長の中でどのような時に飲むワインが一番好きですか?
例えばですけど、天気の良い日だったらビーチ沿いでシーフードをつまみながらロゼとか飲んでいたら良いんじゃないかなって感じがしますけどね。
ワインはあまり詳しくないので、飲むときはお店の人とかにお願いして軽くて飲みやすいものを頼んじゃいます。
中華に合うワインもあるのでどんどん勉強していくと良いと思いますよ。
ワインかぁ〜!難しそ〜!(笑)
まぁ難しく考えずに、楽しく飲みながら覚えるっていうのが良いんじゃないですかね。
この年代のワインが好きとかはあるんですか?
去年のことなんですけど、ちょうど還暦を迎えられる方がいて1961年のボルドーのワインを開ける機会があって、それを飲んだ時に素晴らしく感動しました。60年前なのに若々しく妖艶な感じがして、素晴らしい歳の重ね方をしたワインだなと思いまして。もちろん若くて早飲みのワインも好きですけれども、熟成したワインっていうのは時が刻まれている感じがして非常によかったですね。
すごい!そういうの感じるんですね。音楽で言うとレコードの音とかと同じ感覚なんですかね?
そうだと思いますね。
最近感動したことはありますか?
北海道でいいピノ・ノワールができるっていうことで、フランスからモンティーユっていう名門のワイン醸造家がやってきて、その人が作ったファースト・ヴィンテージを飲んだ時に非常に驚いたんですよ。その前にフランス・ブルゴーニュのワインを飲んでたんですけど、そのワインと同じくらいのレベルだったから、これがまさか北海道で作られてるとはっていう"いい意味"で驚いて。ここまで北海道のワインが持ってるポテンシャルは素晴らしいのかっていうので感動しましたね。
へぇ〜、すごい!
もう一つ三笠市の「宮本ヴィンヤード」っていうところのワインがあるんですけれども、そのワインも感動したワインの一つで、ここ最近の北海道のワインには非常に驚かされていますね。地域としてのポテンシャルは計り知れないものを持っていると思います。
ワインはマーケットが世界中に広がってますから、北海道でこのようなワインが作られているっていうことは世界的にも今後注目が集まってくるのではないかと思います。
余市町長・齊藤啓輔 Profile.
平成16年3月 早稲田大学卒業
平成16年4月 外務省入省
平成17年7月 在ロシア日本国大使館
平成19年7月 在ウズベキスタン日本国大使館
平成21年7月 在ウラジオストク日本国総領事館
平成23年7月 外務省ロシア課
平成26年7月 内閣総理大臣官邸国際広報室
平成28年6月 北海道天塩町副町長
平成30年9月5日 余市町長就任
MONCA Profile.
シンガー
中国大連出身。3歳から札幌で育つ。
16歳の時現在の音楽制作のパートナーでもある林惠佑と出会い音楽に目覚める。
2014年、TOKYO GIRLS COLLECTION(SS)にオープニングアクトシンガーとして出演、秋冬にはメインステージに出演。
2017年ミニアルバム「Unbalance」をリリース。
現在北海道を拠点に音楽活動をしている。
YouTube Channel
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