中川町エコミュージアムセンター 疋田吉織さん × NORTH NAVIライター SERINA 対談
2023.02.17

 2022年5月、約8,300万年前の地層から発見された恐竜の化石が、テリジノサウルス科の新種と判明し話題となった化石の里・北海道中川町。
 今回は、北海道中川町にある自然史博物館・宿泊研修施設 中川町エコミュージアムセンターのセンター長・疋田吉織さんに登場していただき、中川町で発見された化石や、エコミュージアムセンターについてお話をお聞きしました。


SERINA
SERINA

こんにちは、NORTH NAVIライターのです!よろしくお願いします!

中川町,エコミュージアム
疋田

お願いします。

SERINA
SERINA

本日は中川町エコミュージアムセンターのセンター長・疋田吉織さんに色々お聞かせ頂けたらと思いますのでよろしくお願いします!それではまず疋田さんのプロフィール、経歴紹介をお願いします。

中川町,エコミュージアム
疋田

私は元々福岡県の北九州市出身で、大学の進学の際に北海道に来て、北海道に来て29年で、中川町に来て25年になります。大学からそのまま中川町の博物館を作るための準備室に採用されて中川町来て25年って風になります。

SERINA
SERINA

はい、ありがとうございます。次にエコミュージアムセンターについてお聞きしたいです。

中川町,エコミュージアム
疋田

エコミュージアムセンターは、廃校になった旧佐久中学校を全面改装した施設です。体育館が自然誌博物館になっていて、校舎棟が宿泊研修ができる研修棟になっています。宿泊型の体験研修施設がエコミュージアムセンターとなっています。
また、中川町は街全体を博物館とみなして地域作りを進める中川エコミュージアム構想というのをやってまして、その中心施設がこのエコミュージアムセンターになります。

SERINA
SERINA

なるほど。エコミュージアムセンターに来ていただく方はやっぱりファミリー層が多いですか?

中川町,エコミュージアム
疋田

そうですね。ファミリー層も多いですし、やっぱり小さいお子さん連れももちろん多いんですけど、シルバー世代の愛石家というんですかね?石とか変わったものが好きな方も多く訪れて頂いてます。

SERINA
SERINA

なるほどですね。ありがとうございます。
次に中川町の恐竜や化石の歴史についてお聞きしたいです。

中川町,エコミュージアム
疋田

明治時代に行われた北海道庁の資源調査で、中川町内にどんな資源があるのかっていう調査が行われたんですけども、その調査の際にアンモナイト化石が発見されるということが明らかになりまして、いろんな研究者の方が入って、中川町のアンモナイトというのが知られることになりました。
それから1930年代後半から40年代にかけて、当時の九州大学の松本達郎教授が調査されまして、その中で中川町の地層化石を記載されて、それが今の中川町のアンモナイトとか恐竜時代の化石のスタンダードになっています。その後、中川町の首長竜が2体発見されていますけど、最近ではパラリテリジノサウルスが発見されたりとかですね、化石の発見が続いています。

SERINA
SERINA

そのパラリテリジノサウルスの化石は2022年5月に発表されましたよね?その発見までに20数年くらいかかったとお聞きしたのですが。

中川町,エコミュージアム
疋田

1998年に確か発見されて、まだその当時はエコミュージアムセンターはできてなかったんですけども、エコミュージアムセンターの前身になる中川町郷土資料館に、地元の遠藤富士幸さん(中川町の化石愛好家)という方から「山の中で骨みたいなやつを見つけた」ということで寄贈頂きまして。当時は、もちろん石に入ってる状態だったのでよくわからなかったんですけども、なんか薄い骨が見えたので「亀の化石かな?」っていう風に思ってて、そのまま収蔵庫に大事に保管していました。

SERINA
SERINA

はい。

中川町,エコミュージアム
疋田

そして、エコミュージアムセンターに移って来て2003年に恐竜展やったんですけども、その際に全国から色んな恐竜好きな学生アルバイトに来てもらって、来館者に恐竜化石をクリーニング(化石を石の中から取り出す作業)する作業を見ていただく実習をやっていたんです。その時に、ちょうど遠藤富士幸さんからいただいた化石がサイズ的にも扱いやすかったので、クリーニング作業を進めたところ「どうも亀じゃないみたい、もしかしたら...」ということで。
僕は恐竜化石に関しては素人なんですけども、素人が見ても恐竜の爪っぽいなっていうのが出て来たので「もしかしたらすごい発見かもしれない」という風にその時思いました。その時が2003年。

SERINA
SERINA

それが2003年。

中川町,エコミュージアム
疋田

はい。それから当時早稲田大学の学生だった村上さんという方が論文を書いたんです。その時の論文には、テリジノサウルスを含むマニラプトラというもうちょっと大きい分類群の方になっていたんですけども「これはテリジノサウルスに違いない」っていう決定的なことを言えなかったんですよね。

SERINA
SERINA

へぇ〜。

中川町,エコミュージアム
疋田

その後、2015年に北海道大学の小林先生が海外の研究者と一緒に博物館を訪れられた時に、標本を一目見て「テリジノサウルスの化石は僕が世界で一番見てる。僕だったら何かわかるかもしれないから一緒に研究しましょう。」と言っていただき、そのままお貸しして新属申請。パラリテリジノサウルスっていう名前になったのが今年2022年5月に公表されたっていうような流れになってます。

SERINA
SERINA

すごいニュースになってましたもんね。Yahooニュースとかでも見ました。

中川町,エコミュージアム
疋田

やっぱり小林先生が発表される恐竜の論文っていうのは、すごくその斬新な切り口もあるし、新しい発見もあるのでいろんな方が注目しているんだと思います。

SERINA
SERINA

なるほどですね。

中川町,エコミュージアム
疋田

実はそのプレスリリースの場所に僕もいたんですよ。

SERINA
SERINA

そうなんですね!

中川町,エコミュージアム
疋田

全く映ってないですけど!(笑)

SERINA
SERINA

そうだったんですね!(笑)

中川町,エコミュージアム
疋田

北海道大学の博物館でプレスリリースを行いまして。地元の方も来て欲しいということで、発見者の遠藤さんとか私もお誘い受けて、みんなで行くという話だったんですけども、結局遠藤さんが仕事でこれず、僕が代打みたいな感じで。それと一緒に研究された方はオンラインで記者発表ということで、あの時は北海道大学と岡山理科大学で2つ同時にプレスリリースをやったんですよね。

SERINA
SERINA

へぇ〜、なるほど。
疋田さんに地球環境科学についてお話しをお聞きたいなと思っていて。(プロフィールに)「博士」って書いてあるので気になるなと。

中川町,エコミュージアム
疋田

当時の北海道大学の地球環境研究科というところで学位を取ったのでそういう名前になってます。地球環境というと、例えば僕と同じ研究室いた方はサロベツ湿原を研究している方とか、雪とか氷の研究をやってる方とか、地球環境全般を研究されてる方が多かったです。一応化石も昔の環境を知るための1つの証拠になりますので、化石から過去の環境を知る、探る、そして未来の環境を予測する、というようなことで地球環境科学というところにいました。

SERINA
SERINA

先日、遠藤富士幸さんとお話しさせていただく機会がありましてお聞きしたんですけど。地層の話で、以前に沼田町に行ったことがあったみたいで、その時に地層ズレで生きていたものが違うというか。中川町の方は昔の化石が多く発掘されるけど、場所にとっては割と最近の化石が発掘されるみたいな話を聞いたんですよね。

中川町,エコミュージアム
疋田

そうですね。アンモナイトとか恐竜時代の化石は、南は浦河町あたりから夕張市、三笠市、芦別市、ちょっと日本海側にきて沼田もちょっとかすりますけども、小平町、苫前町、羽幌町、遠別町、中川町、まぁ音威子府でもちょっと出ますが。それで最終的には猿払村にいって、宗谷岬までもいって。
北海道って菱形じゃないですか?中川町って南北に50kmくらいあるんですけども、菱形の南北に尖ってる部分に地層が分布してるっていうことで、多く恐竜時代の化石が発見されるという風になります。ですから、そういうところから外れたら、先ほどおっしゃったように時代の若い地層の町ももちろんあります。

SERINA
SERINA

へぇ〜、やっぱりそういうことから時代というか昔からの流れというか...。

中川町,エコミュージアム
疋田

そうですね。やっぱり化石とか火山の痕跡とかで昔の時代を調べて行くということですね。

SERINA
SERINA

なるほど。疋田さんはどうして化石とか地球環境とかに興味を持ったんですか?

中川町,エコミュージアム
疋田

小学生の頃からすごく化石に興味があって。今はロシアって言ってますけど当時のソ連科学アカデミーの持ってる化石の標本とかを展示したものが北九州市であって、その時に恐竜の絵コンテストに応募して入選したのがきっかけかな。
男子であれ女子であれ、小学校低学年くらいの時って恐竜に興味持つと思うんですよね。それが大体中学生くらいになると部活動とか他のことをやって忘れちゃうんですけど。高校生になってどこに進学するかなっていう事を考えた時に「昔化石好きだったから、大学に入って化石を勉強しよう」と思って。できれば化石を研究して学校の先生になりたかったんですよ。

SERINA
SERINA

そうなんですね!

中川町,エコミュージアム
疋田

教員の免許はもってるんですけども。僕の同級生は学校の先生になった方が多いんですが、学校の先生よりももうちょっと化石勉強しようかなと思って。最終的に化石のことを人に教えるとか、自分で研究できるような職場を探して、今中川町にいるということです。

SERINA
SERINA

そうなんですね。ありがとうございます。
あと、化石に関するここだけの話とか秘話とかありますか?

中川町,エコミュージアム
疋田

先ほど化石の話しましたけども、パラリテリジノサウルスの化石は新種になるまで22年かかったとおっしゃってましたけど、それは僕が寄贈を受けてから、亀の化石じゃないかと思い込んでたので倉庫の中に4年くらいあったっていうのがここだけの話ですね。(笑)

SERINA
SERINA

ほんとはもうちょっと早かったかもしれない?(笑)

中川町,エコミュージアム
疋田

早かったかもしれないですね。(笑)

SERINA
SERINA

なるほど!(笑)

中川町,エコミュージアム
疋田

あとは博物館の中で入り口のエントランスのシンボル展示のとこに展示してある「中川ニシン」ですかね。「中川ニシン」はニシンという名前になってますけど、実はあの分類学的にはニシンよりもうなぎに近い分類群で。ただ一緒に研究した方と和名をつける時にニシンっていうのがすでに定着しちゃってて。僕も一緒に論文を書いたので、ニシンよりもうなぎの方が近いってわかってたんですけど、中川町の名前をつけたいから「中川ニシン」という名前がいいんじゃないかって提案されて。北海道っぽいし、なおかつ「海がない中川町で二シンが!」みたいな感じで面白いじゃないですか?(笑)
それでみんなでお酒を酌み交わしながら「中川ニシン」という名前にしたんですよね。それもあのなかなか面白いなぁと思ってますね。

SERINA
SERINA

なるほど、ありがとうございます。
疋田さんが今後考えていることや思いなどあればお願いします。

中川町,エコミュージアム
疋田

そうですね、中川町はあのフィールドが近いし、研究するものも豊富であるということなので、子供達が「中川町に行って化石を研究するんだ」とか、そういう風になってほしいですし、僕ももう全く何もできないということもないので、最後に自分が中川町にきて研究したことをまとめて、それを次の世代に繋げられるような事をしていきたいなと思ってます。基本的には人間の知的好奇心という面はあるとしても、次の世代を育てていくようなこともやって、バトンタッチしていかなきゃいけないなっていう風に考えてます。

SERINA
SERINA

なるほど。それでは最後にNORTH MAVIをご覧の方にメッセージをお願いします!

中川町,エコミュージアム
疋田

今回中川町に来て私を含めて色んな方の話を出題していただいてるし、北海道でどういう人がいて、どんな動きがあるのかっていうことを見るためには、すごくNORTH NAVIっていいサイトだなって思ってますので、皆さんにも見ていただいて、それで興味を持ったらぜひいろんなところに行きましょう。もちろん中川町にもいらしてください。

SERINA
SERINA

はい、本日はお時間頂きありがとうございました!中川町エコミュージアムセンターのセンター長疋田吉織さんでした!ありがとうございます!



疋田 吉織 Profile.

中川町,エコミュージアムセンター

1968年 福岡県北九州市生まれ。
1997年3月 北海道大学大学院地球環境科学研究科博士後期課程を修了。
同年4月より中川町役場企画課・化石の里づくり推進室研究員となる。
令和元年〜中川町教育委員会 教育次長 エコミュージアムセンター長。
専門は地質・古生物学。

中川町エコミュージアムセンター

SERINA Profile.

NORTH,NAVI,SERINA

ライバー(配信者)としての活動経験もあり、配信ルームを完備したオフィスを札幌と旭川で展開する、ライブ配信プロダクションの、「LIVERS OFFICE エクスプロレ」の戦略、人事を担当。
一人一人の個性を活かして、活躍できるように、日々奮闘している。
また、はちみつの奥深さを学び、心を打たれ、手を汚さずに食べられるハニースティック「#8HONEY(エイトハニー)」を考案し、発売する。
いつでも食べられる便利さと美容、健康、料理にも。”北海道産純粋はちみつ”がポイント。
好奇心旺盛で知識欲、経験欲のかたまり。

野生的な直感を大切にして生きている。

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