長年スノーボード業界に携わる二人によるスペシャルトーク!
当時のシーンの様子やスノーボードカルチャーについて、スキーやスノーボードのチューンナップ・メンテナンスショップ「SLIDE」営む鈴木邦裕氏が、これから始まるシーズンに向けて、よりスノーライフを楽しむための簡単なメンテナンス方法を語るスノーボーダー・スキーヤー必見のトーク!
二人の出会いと当時のスノーボードシーンについて
もう今さら感ありすぎて何喋っていいかわからないね!(笑)
ただやっぱりこれだけ長い時間二人とも同じ業界にいるわけじゃない?俺とスーさん(鈴木邦裕)の出会いについて話していきたいんだけど...。
出会いって...(笑)
俺は正直一方的に知ってたさ!
それはもちろん俺も知ってたよ!
当時「スクランブルUSA」っていうスノーボードショップがあって、そこに札幌のすごいプロスノーボーダー達が集結している中にいた取り巻きの一人みたいな!(笑)
そう!一般人代表みたいな!(笑)
めちゃめちゃ上手い人達のグループの中にいる後ろで「イェーイ!」ってやってる感じの!
(プロスノーボーダーに)"憧れてます" 感が半端ない人っていう感じのね(笑)
それだけでのし上がってきたから!(笑)
あのすごい人達の中にいるあの太った人誰だろうっていう感じで見てた、俺は!(笑)
あれ25年前ぐらいか!
そうだね!一番スノーボードが熱かった時代でしょ?(笑)
スノーボードバブルの第一回目だね!
忙しかったもんな〜!
何やってたの?
俺はね、"ブーツ担当" っていう訳のわからないこと言われて。
えっ、(「スクランブルUSA」の)スタッフだったの!?
スタッフだったよ!アルバイト!
当時から(スーさんは)スノーボードのことをやたら知ってるイメージなんだよね!
オタクだったじゃん?
そうだね!オタクじゃないと無理じゃない?(笑)
まぁまぁ。俺らもオタクだったんだけど、もっとオタク感があって。
ただスノーボードを滑っている姿を見たことがないっていう。
だって滑れないもん!(笑)そんなこと言われても!
"憧れてる" 感しかないんだもん!技術伴ってないんだから!(笑)
当時のスーさんの写真をちょっと前に見せてもらったんだけど、スノーボードで板を掴む技で "グラブ" っていうのがあるんだけど、板を掴む場所で技の名前が違うのね。今でもそうなんだけど、ストレートジャンプでかっこいいって言われてる "グラブ" が "トゥイーク" っていう、板を掴んでから足を反り上げるみたいな。
"ねじる" っていう意味だからね!
そのスーさんの写真が、角刈りでサングラスかけて "トゥイーク" やってて!(笑)
時代でしょ?(笑)
いや!当時角刈りはいなかった!(笑)
(笑)
あの写真が凄すぎて!(笑)
あれでも "トゥイーク" 的にはいい形してるよね!
形はかっこいい!形はかっこいいのに角刈りって!(笑)
でも "トゥイーク" やれたんだなって!
いや、めちゃくちゃ練習したもん!その代わりあれしかできなかった!
逆に?(笑)すごい難しいのに!
一番最初に見たビデオであの技が "メソッド" って紹介されてて。"メソッド" は基本的な技ってことは知ってたから、それを見てひたすら練習してたらその技は "トゥイーク" だったっていう!(笑)
(笑)
「あれ、 "メソッド" じゃねぇじゃんこれ!」って思って(笑)
できるようになった頃には "トゥイーク" ができてたっていう!こっちは "メソッド" やってるつもりだったんだけど(笑)
当時やっぱり「スクランブルUSA」にいたプロのライダーの人達って "トゥイーク" が映える人達がいっぱいいたもんね。
そうなんだよね。えげつないのがいっぱいいたからね!あんなの目の前で見せられたらさ。
ダンスでもそうだし、サッカーとかでもそうなんだけど、スノーボードもスタイルがすごくあって、同じグラブ技なのにやる人によって形が違ったりするから。
あんなに違うのもすごいよね。
そういう部分で角刈りっていうスタイルを出してくるのがすごく衝撃的な写真だった(笑)
でもお互いに知り合っててさ、喋ることが何年もなかったじゃない?
なかった!俺はだって(松井のことを)嫌いだったもん!
いや、そうなのさ!実は俺も(スーさんのことを)嫌いだった!
「松井克師っていうテレビ出てるやつなんなの?」みたいな。
あの時代ってプロスノーボーダーがテレビに出るっていう感じじゃなかったでしょ?
そう!ちなみに前回(NORTH NAVIの対談で)ムラスポの柴田さんと喋った時も、「お互い嫌いだった」っていう話からスタートして!(笑)
(笑)
みんなお互い嫌いだったんだ!(笑)
そうなのさ!やっぱりスノーボーダーって尖ってる人が多くて!
尖ってる人以外いた?
そうなのさ!嫌いからスタートが多いよね!
多い!
今の仲間もほとんどが嫌いだったもん!(笑)
嫌いから始まるスノーボードの友情っていいね!(笑)
そんなんばっかりだよね!
当時手稲山で毎日滑ってたんだけど、ある日「松井克師っていうのがくるらしい」ってなって...。
手稲はあんまり行かなかったからね!
「は?どうせたいして滑れねぇんだろ?」っていう感じで見てたら、結構雪が積もってるところに逆向きのスタンスでそのまま滑り降りていったのを見て「めちゃくちゃ上手いじゃん!」ってなって!(笑)それで「俺上手い人好き」って!(笑)
(笑)
またそこで "憧れ" が始まったんだよね!(笑)
「松井克師ってうまいんだ!」って!(笑)
俺は尖ってる人は嫌いなんだけど、めっちゃ話しかけてきてくれる人は好きなんだよね!
その時からめっちゃ話しかけてくるから「こいつ実はいいヤツかも」ってなって!
滑り降りていくのを見てからはもう(松井に対して) "憧れ" になってるから、そこからは表情変わってるね!(笑)
その時のことは今だに覚えてる!
そうだよね!その時初めて一緒に滑ったし、初めてちゃんと喋ったんだよね!
(出会い方が)ひどいなぁ〜!(笑)
ひどい!ひどすぎる!(笑)
でも当時はそういう出会いしかなかった気がする。
みんなそうじゃない?
「俺負けねぇぞ」感出してる人いっぱいいたでしょ?
そうだね!一緒に滑ってから仲良くなるよね!
"ケンカしてから仲直り" じゃないけど、一緒にセッションしてからの...みたいな!
すっごいわかる!いいことだよね!
最近のスノーボーダー達はみんな最初っから仲良しだから!今の人達からしたらスノーボードはスポーツだから!スポーツマンシップ!
俺らは違うもんね!スノーボードはカルチャーなんだよね!(笑)
そう!カルチャーでしかなかった!(笑)
カルチャーでやってるのに(松井が)テレビに出てるのがめちゃめちゃ気に入らなかったから、その当時はね!
だって、スノーボードが初めてオリンピックの正式種目に決まった時はビックリしたよね!
ちょ〜びっくりした!
当時の俺ら世代だったら誰でも知ってる世界的に有名なテリエ(テリエ・ハーコンセン)っていう選手がいたんだけど、そいつが(オリンピックに)出ないって言ってて。
そう!その当時は「やっぱテリエかっけぇ〜!」ってなった!
でも出てる人達は出てる人達ですごいよね!
そこで金メダル獲った人が世界中で有名になるわけじゃん?でもスノーボードのカルチャーを知っている人達からしたら、「オリンピックを出なかったテリエがすごい」になっちゃうじゃん?
まぁこっち側の人間からしてみたらね。でもどっちも正解だからさ。
そうだね!どっちも間違ってないんだけど物事の考え方になるよね。
俺がアマチュアからプロに上がる時に、プロを目指すかオリンピックを目指すかの2択に迫られて。それがちょうどそのタイミングだったのよ。
へぇ〜!そうなんだ!
「これはどっちにいくべきなんだ」って。当時は大会に出まくってたから、どっちか迷った時にテリエじゃないけど「プロだよな」って。「プロスノーボーダーになりたい」って思ってずっとやってたから、やっぱカルチャーとっちゃって。
いや〜、正解じゃない?その時は!
そうなのかな?でも、オリンピックへの道を目指して、そっちの道でいって、今プロとして頑張ってるすごいやつもいっぱいいるなと思って。
まぁいるけど、あの当時はまた色々あったでしょ?オリンピックに出るっていうことだけでも。あの時代は選手が可哀想だったよね。
でも今となってみたらオリンピックじゃなくてプロの道を選んでよかったなぁとは思うけど。
「SLIDE」で行うメンテナンスとは?
スーさんはプロを目指そうとかは思わなかったの?周りでプロとか多かったでしょ?
それこそスノーボードを始めて2年目ぐらいの時に、プロになってみたいっていう思いはあったんだけど、そのタイミングで太田寛介っていうとんでもない化け物みたいなやつに会ってしまって。
(笑)
それも今でも覚えてるんだけど、太田寛介がプロになるちょっと前ぐらいの高校3年生ぐらいの時に一緒に滑ってて、その時に上手すぎて「このレベルじゃないとプロになれないんだ」って思って、始めてから早い段階でプロは無理だと。
でも、そこからスノーボードに関わって何かずっとしていたいっていう思いに変えて。
あ〜、もっと "憧れ" 感を強くってことだ!(笑)
それでスノーボードにハマりすぎてその時していた仕事も辞めちゃって、バイトしながらスノーボードばっかりしてたんだけど、そこからさっき言ってたショップで働かせてもらうことになって。ショップに入っていればスノーボードに関わることができるから。
そうだね。
それで「こっちだ」ってなって。で、ショップで働いているうちにワックスとかチューンナップ関係の人に声をかけられて。
なんで声かけられたんだろ?
ちょうど働いているショップを辞めるって話してたら、「じゃあうちくる?」って言われて。
「いいじゃんおまえ、雰囲気だけ出てるじゃん!」って!(笑)
(笑)
でも、性格的には合ってるわ!こう見えて細かいんだよね!
興味あるものには細かいんだよね!A型の典型的なやつだね!
そうか〜。それからこっち(メンテナンスの仕事)の方になったんだ。
こっちの専門の仕事を始めてから、今までショップでワックスかけたりしてたけど、「やり方が全然違うぞ」ってなって、そこから本格的に全部勉強し直して。
やってるうちに「俺がスノーボードをするにはこれを覚えるのが一番いい!」ってなって、それで今に至ると。
なるほどね!今ワックスの話が出たから聞きたいんだけど、ワックスを自分でやりたいっていう初心者に向けてアドバイスはある?
シーズンが始まってこれから滑るっていうときは、簡易ワックスをその場で生塗りっていうことでもいいと思うんだけど、スノーボードもスキーも板の裏側の材質上、ただ単に表面に簡易ワックスを塗ってても滑りは持続しないんだよね。
一本滑ったら終わっちゃうよね。
そうそう。それを持続させるにはよく言われる "ホットワックス" っていう専用のアイロンでワックスを温めて溶かして、板の中に染み込ませるっていうのをやらないと滑走性が持続しない。
ただ、"ホットワックス" はそれなりにコツも必要だから、"オールインワン" って言われる、温度帯をそんなに気にしなくてもいいものがあるから...。
"オールインワン" あるんだ!
昔使ってたような板とかで塗る練習をして、ある程度できるようになったら使ってる板でやってみるといいんじゃないかと。
うちもそうだし、ショップとかに行くと教えてくれるから、やってみたい人はショップの人に聞くなり、僕みたいな人間に聞くなりしてやってみるといいと思います。
素人目線で考えたら、アイロンでワックスを溶かしながら塗るっていうことだけじゃダメだよね?
"ホットワックス" っていうのは板にワックスを染み込ませるっていうことがメインで、表面に残ってるワックスは基本的に必要ないものなんだよね。それは専用のスクレッパーっていうものがあって、それできれいに剥がした後に、さらにブラシできれいにすることによって滑走性が良くなると。それを一通り全部やって "ホットワックス" っていう感じかな。
ただワックスの中にも寒い日用だったり暖かい日用とか結構シビアだよね。
温度差が激しい所だとシビアになってくるけど、正直そこまで考えなくてもさっき言った "オールインワン" っていう便利なものがあるから、それだけでもやらないよりは絶対やった方がいいかな。
スーさんは夏場の間はいつもお店を開けてる訳ではなくて、一応空いてるのは週末?
一応週末は開けてます。
通常営業が始まるのは?
10月からは通常営業で平日もオープンしてます。
シーズン入る前にワックスなどやりたいっていう人がいたらお店に来ていただいてって感じだよね?
チューンナップショップって言われても実際どういったサービスを行なっているのか、一般の人はわからないと思うので、ここの「SLIDE」っていうショップではどんなことをやってくれるのかざっくりと説明してもらえますか?
お客さんに板を持ってきてもらって全体的にチェックして、板に傷がついていればマシンで傷を消したり、それでも傷が残るようだったらリペアをして。エッジもある程度使うとガタガタになるので、それをきれいにしてホットワックスかけてって感じですかね。
俺の知り合いとかでスノーボードの板がベロって剥がれたりすることがあるんだけど、そういうのってどうなの?
全部が全部修理できるとは言えないんだけど、ある程度までだったら修理もできます。
じゃあチューンナップショップは修理もできて、ワックスメンテも色々できると。
なるほど、そういうお店だったんだね。(笑)
実はね!(笑)
自転車はあるわ、ギターはあるわ、服はあるわでもう...(笑)
それは趣味でしかないから!(笑)
お客さんには「どれが売り物なんですか〜?」ってよく聞かれて(笑)
パッと見なんのお店かわかんないよね!
なんのお店かわからないで(お客さんが)よく入ってくるけど、説明したら「あっ、そうなんですか〜。」って言って帰っていく。(笑)
(笑)
なんとなくこの「SLIDE」っていうお店がどんなお店かっていうのがざっくりわかった。 今までちょくちょく遊びにきてたけど何のお店かわかんなかったから。(笑)
秘密裏に動いてたからね。(笑)
じゃあ最後にNORTH NAVIを見ている方に一言お願いします!
スキーなりスノーボードなりをやる方も見ていると思うので、シーズン前とかに自分の板を見て、ちょっと汚くなってるなぁ〜とか、エッジがガタガタだなぁ〜ってもし気づいたら、うちみたいなチューンナップショップとか、ご近所のスノーボードショップとかでもいいので相談しに行くなりしていただければと!
いや、それは「SLIDE」にきた方がいいでしょ!
最終的には(板は)俺のところにくるから!(笑)
気になる人がいればそういう話もできるので、ぜひお店の方に来てもらえれば!
自分でワックスを塗るけどイマイチ板が走らないっていう人も結構いると思うんだよね!
そういう人達の相談も全然乗れるし、自分でそこまでやってる人にはちょっと突っ込んだ話とかもアドバイスできると思うので興味ある人はぜひ!
興味ある人はぜひ気軽に遊びにきてみてください!
よろしくお願いします!
(お店の雰囲気が)入りづらいですけど。(笑)
松井 克師 Profile.
プロスノーボーダー
https://www.instagram.com/invariantcode/
https://twitter.com/katsushimatsui
https://www.facebook.com/katsushi.matsui.3
SALOMON、OAKLEY、SUUNTO、ムラサキスポーツ、ガリウムWAX、Goldwin、Oren’ge、ASHRAM、un-fin
1995 JSBA公認 日本アマチュアランキング2位
アマチュアランキング2位でプロの大会に出る権利をもらい、翌年のプロ戦で9位
1996 JSBA公認 プロ昇格
1997 TRUST6MEDIA スノーボードムービー設立
世界的に認めらられる北海道の雪、そこでの映像制作、出演をし続ける
2002〜2012 北海道テレビ(HTB) NO MATTER BOARD にMCとして出演
10年間番組MCとして、日本や海外での撮影、出演
2014 ヨコノリ少年団設立
ヨコノリ少年団団長として、ヨコノリキッズの育成。冬はばんけいスキー場、ダイナスティスキー場、キャンモアスキー場、札幌国際スキー場でのレッスン。
夏は札幌キングスやb.SAPなどで人工芝でスノーボードができるジャンプレッスンを行っている。
鈴木 邦裕 a.k.a すーさん Profile.
SNOWBOARD & SKI TUNE UP & MAINTENANCE「SLIDE」オーナー
https://www.instagram.com/suzukun_slide70/
北海道生まれ北海道育ちながらスキーと冬が大嫌いな青春時代を過ごす。
調理の専門学校卒業後に、就職した職場の先輩に強制的に連れて行かれたスキーで地獄を見て、スキーを練習していた時に友人の持っていた「スノーボード」に初めて出会い、「こっちの方がモテるかも!」と当時は思ったのか、そこからなんだかんだで約30年続いている。
それからスノーボードバブルなどと言われていた時代には中々の激務だったスノーボードプロショップでの勤務。
その後、「チューンナップやってみない?」とタイミングよく声をかけてもらいチューンナップ業界へ。
そこのチューンナップショップで約10年?程の勤務(修行)した後、2011年 SNOWBOARD & SKI TUNE UP & MAINTENANCE「SLIDE」をオープン。今に至る。
趣味
※スノーボード
※最近「ゆるキャン△」を観てはまったキャンプ